はじめに
今回はいよいよ、ひずみゲージ奮闘記の集大成(第一弾)ということで、実際に計測対象のひずみ(応力)を測っていきたいと思います。(本記事では計測対象の説明は省いていますが、またどこかでご紹介します。)
計測対象
計測対象は下図のようなCFRPパイプです。
パイプの径は大体φ100mm、長さは5000mmぐらいです。途中で径の違うパイプを接続しているため、本記事では径の大きいパイプを大パイプ、小さい方を小パイプと呼ぶことにします。
大パイプは脚立にガッチリ固定されており、片持ち梁に分布荷重が作用する形になっています。
また、ひずみゲージは大・小パイプの根元付近に上下2ヶ所貼り付けています。上下に貼り付けている理由としては、「ひずみゲージ奮闘記 – 評価編(Round4)」でご紹介した温度補償を目的としています。
知りたいこと
知りたいことは、「ひずみゲージ奮闘記 – 評価編(Round3)」と同じで、CFRPパイプの
- 縦弾性係数(ヤング率):E
- 歪み:ε
- 応力:σ
- 応力とひずみゲージ出力値の関係
です。
使う道具
今回メインで使っていく道具は、こちらのたわみの基礎式くんです。
この式は、曲げモーメントM、ヤング率E、断面二次モーメントI、たわみδの関係を表す式なので、今回はこの式を少し変形させてヤング率を求めるために使用します。(たわみは実測します。)
計測結果
知りたいことを計算する前に、計測結果を簡単にまとめておきます。
まずは、ヤング率を求めるために必要な、I、M、δから。
断面2次モーメント I [m4] | 曲げモーメント M [N・m] | たわみ δ [m] | |
大パイプ | 8.75×10-7 | 1.23×103 | 0.17×10-3 |
小パイプ | 2.85×10-7 | 6.66×102 | 1.29×10-3 |
次は、ひずみゲージの出力結果です。横軸が時間[h:m:s]、縦軸がひずみゲージ出力値[-]になります。0:00:00から0:10:00ぐらいにかけてパイプに荷重を掛けていき、それから0:21:00ぐらいまでデータを取得するためにボーーとしていた感じです。
右の灰色部分は今回使用しないので無視してください。2Gの結果です。(2ゴキブリじゃないよ、グラビティだよ。)
使わへんなら書くなよ。
(2Gってことは、2倍の荷重が掛かるってことか。)
知りたいことの導出
改めて、今回知りたいことはこちらの4つです。上から順に導出していきます。
- 縦弾性係数(ヤング率):E
- 歪み:ε
- 応力:σ
- 応力とひずみゲージ出力値の関係
縦弾性係数(ヤング率):E
まず支持条件は、パイプが脚立にガッチリ固定されているので、\(i_{x=0}=0\), \(\delta _{x=0}=0\)とします。
たわみの基礎式(1)より、
\( \dfrac{d^{2}\delta }{dx^{2}}=\dfrac{M}{EI} (1)\)
\( i = \dfrac{d\delta}{dx} = \dfrac{M}{EI}(x+C_1) \)
\( \delta = \dfrac{M}{EI}(\dfrac{1}{2}x^2+C_1x+C_2) \)
ここで、支持条件から\(C_1\), \(C_2\)を求めておきます。
\( i = \dfrac{M}{EI}(0+C_1) = 0 \)
\( \delta = \dfrac{M}{EI}(\dfrac{1}{2}0^2+C_1*0+C_2) = 0 \)
上式より、\(C_1 = 0\), \(C_2 = 0\)となります。
よって、たわみ角\(i\)とたわみ\(\delta\)を表す式は以下のようになるげす。
\( i=\dfrac{M}{EI}x \)
\( \delta=\dfrac{M}{2EI}x^2 \)
また、パイプの最大たわみ角\(i_{max} \)および最大たわみ角\(\delta_{max} \)は、パイプの先っちょで生じるのでそれぞれ以下のようになります。
\(i_{max} = \dfrac{M}{EI}L \)
\(\delta_{max} = \dfrac{M}{EI}L^2 \)
これより、ヤング率Eは以下の式(2)で計算することができ、
\( E = \dfrac{M}{\delta_{max}I}L^2 (2) \)
試験結果より、パイプのヤング率以下のようになりました。
大パイ:\( E_L = \dfrac{1.23*10^3}{17.0*10^{-3}*8.75*10^{-7}} = 212 [GPa]\)
小パイ:\( E_S = \dfrac{6.66*10^2}{128.5*10^{-3}*2.85*10^{-7}} = 186 [GPa]\)
応力:σ
それでは、曲げモーメントMと断面係数Zから以下の式(3)を使って応力を求めていきます。
\( \sigma = \dfrac{M}{Z} (3) \)
大パイ:\( \sigma_L = \dfrac{8.61*10^3}{1.43*10^{-5}} = 86.1 [N/mm^2] \)
小パイ:\( \sigma_S = \dfrac{6.66*10^2}{6.90*10^{-6}} = 96.5 [N/mm^2]\)
歪み:ε
よいしょ、フックの法則\(\sigma=E\epsilon\)より、ひずみεは、
\( \epsilon = \dfrac{\sigma}{E} (4) \)
大パイ:\( \epsilon_L = \dfrac{1.72*10^2}{2.12*10^5} = 4.07*10^{-4} [mm] \)
小パイ:\( \epsilon_S = \dfrac{9.65*10}{1.86*10^5} = 5.19*10^{-4} [mm]\)
応力とひずみゲージ出力値の関係式
それではイーヨイーヨ、応力とひずみゲージ出力値の関係(応力/ひずみゲージ)を求めていきましょう。
1G荷重時(計測結果の00:11:00~00:21:00あたり)のひずみゲージ出力値を平均し整理すると、こんな感じになりました。
うん、ぼちぼちの精度で計れてるんじゃないでしょうか。まだN数が少ないので何ともですが、「ひずみゲージ奮闘記 – 評価編(Round3)」の線形性の話も考慮すると参考程度にはなるかな、という印象です。
まとめ
はい、ということで、少々長くなってしまったひずみゲージ奮闘記も何とか纏まった?ところで、今後は地道にN数稼いでデータの信頼性検証したり、システムの改良に取り組んでいきたいと思います。
では、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。
コメント